
2026/06/02 0:11
地質学的な自然現象の一形態である可能性があると考えられる生化学的プロセス
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要約▶
日本語翻訳:
フランス国立農業・食品・環境研究所の研究者らは、生命の起源に関する従来の見解に挑み、「無菌(sterile)」とされる土壌が数年にわたり生物学的代謝を模倣することを示しました。15 年にわたる調査で、Sébastien Fontaine が主導し、その後 Clémentin Bouquet が共同主導して実施されたこの研究では、γ線を用いて土壌サンプルの微生物を全て除去する殺菌処理が行われました。しかしながら、この殺菌にもかかわらず、土壌は酸素を消費し、二酸化炭素を放出し、最大 6 ヶ月到達まで電子電流を流すことを行い、これらは代謝の兆候です。実験では、代謝過程に似たグルコース分解が検出され、何ヶ月も不活性であったサンプルからもクエン酸回路の 4 つの前駆分子が見つかりました。同チームは、これらの反応は無生物的要因によって駆動されており、触媒として機能するタンパク質や、生物学的酵素なしで化学変換を促進する鉄やアルミニウム酸化物などのミネラルによるものであるとしています。これらの発見は、エネルギー放出型化学が生物学に先行する地質学過程である可能性を示唆していますが、批判者らは、将来の研究において、持続的なミネラル化学と痕量レベルの遊離酵素との区別が不可欠であると警告しています。
本文
無機物の土壌で発見された「代謝」という生命の謎
15 年間の研究と『死なない土壌』
フランス国立農業・食品・環境研究院のセバスティアン・フォントーヌ氏とそのチームは、微生物がいない(滅菌された)状態の土壌でもなぜ二酸化炭素を長期間放出し続けるのかに 15 年間取り組みました。
- 実験方法: 土壌をジャーに密閉し、殺菌用のガンマ線で照射して微生物を死滅させます。
- 異常な結果: 待っても待っても、土壌は呼吸(二酸化炭素放出)を止めることはありませんでした。顕微鏡下では生命の兆候は見られずましたが、依然としてガスが放出されていました。
- 結論: これは実験装置による誤り(アーティファクト)ではなく、「死んだ土壌」自体が代謝反応を行っているという事実であると確信しました。
- 期間: 論文発表では、土壌試料が6 年間にわたり酸素を消費し、二酸化炭素を放出し続けたことが報告されています(『Science Advances』, 2025)。
「酵素なし」の代謝の可能性
通常、代謝プロセスは生きたタンパク質である酵素によって厳密に制御されると考えられていますが、この発見はそれを覆す可能性を示唆しています。
- 細胞外代謝: 生命体に限定された反応が、細胞外の環境(無菌な土壌)でも成立し得ることを提案しました。
- エネルギー解放: 炭素豊富な糖分子のエネルギーを解放する特定の生化学反応は、生命体の活動とは限らない可能性があります。
- 進化への示唆: これらの代謝反応は、地球上の生命誕生以前に存在していたものであったのかもしれません(フォントーヌ氏)。
- オタワ大学のジョゼフ・モラン氏は、「これは地質学における化学反応であり、生命特有の現象ではない」と評しました。
発見の経緯:実験装置と誤差の疑い
- 無機物基準の設定: フントーヌ氏は、無機物の土壌中の炭素基準を確立するため、滅菌したシリンジで空気をサンプリングし、質量分析計で測定していました。
- 微生物絶滅後: 放射線照射により微生物が死滅した後、二酸化炭素放出量は減少しましたがゼロにはならず、100 日以上にわたり安定して放出を続けていました。
- 学界からの批判: この結果は「実験上の誤差(アーティファクト)」または「追求する価値のないエラー」と見なされ、研究者から指摘されました。
- 酵素添加実験: チームが酵母由来の少量酵素を土壌に加えたら、炭素放出量が急増しました。これにより、「おそらく酵素がもともと進行していた反応を加速させていたのではないか」と推測されます。
- 査読者の懐疑: 論文投稿時には、「一部は前向きだったが、特に無菌性に関心を持つ者たちは極めて懐疑的だった」と述べています。
- 徹底的な検証: 後続の 10 年間で、より強い放射線、圧力、熱を加えた徹底した殺菌を試みても土壌が呼吸を続けたことを確認しました。走査型電子顕微鏡で細胞が見つかった際も、RNA や DNA は検出されず「明確に死んでいる」ことが示されました。
- 汚染の可能性排除: 微生物を人為的に添加・再定着させると著しく多くの二酸化炭素が放出されるため、無菌試料の現象は「消菌不十分」によるものではないと結論付けました。
『汚れた電子』:燃料電池による証拠
6 年間の共同実験(クレマンタン・ブーケ氏ら)で、土壌中の電子の流れも確認されました。
- 長期観測: 通常の土壌とグルコース添加試料を 1,423 日以上にわたり放置し、二酸化炭素放出は依然として続き、減少するがゼロにはならなかったことが確認されました。
- 燃素電池の実験: チームは電子を検出できる燃素電池(燃料電池)を開発し、回路を閉じて実験を行いました。
- 塩水溶液を用いた対照設定よりも、土壌を通じて流れる電流が数倍も高かったことが確認されました。
- これは、「酸素依存型のクローバスサイクル代謝に似たプロセス」を示す電子の流れが、無菌土壌によってサポートされていることを証明しました。
- 中間生成物の発見: 2025 年のプレプリント(biorxiv.org)では、6 ヶ月経過した無菌土壌試料内で、クローバスサイクルに関する4 つの中間生成物を観察できたと報告されています。これらは照射後に形成され、「生命のない環境下でも土壌塊自体が反応を触媒できる」可能性を示しています。
生命の起源への示唆と異論
この発見は、生命の始まりや代謝の本質について新たな議論を生んでいます。
メタンの循環理論
- 金属触媒説: カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョシュア・シミル氏は、「グルコースは自然に酸化され、クローバスサイクル中間体を形成する」と説明しました。
- 土壌に含まれる鉄酸化物やアルミニウム酸化物などがこの変換を触媒できると指摘されています。
- 生命前の化学反応: 金属(鉄や亜鉛など)は古くからの酵素の中心部にあるため、これらが生命誕生以前にこれらの反応を触媒していた可能性が支持される理論です。
- モラン氏らは、「代謝こそが生命活動の基礎であり、遺伝子はそれを制御する仕組み」と再考すべきだと主張します。
酵素残留説への反論
- 分解された酵素の可能性: インドの天体生物学者スダ・ライヤマニ氏は、「死んだ細胞から放出された酵素が土壌に残り、反応を継続している可能性」を示唆しました。
- ラルサー氏も同意していますが、「酵素は細胞外に出ると指数関数的に活動が低下する」とブーケ氏は反論しました。
- フントーヌ氏は「6 年間続くことが知られている酵素はない」「我々の観測した呼吸が酵素によるものとは考えられない可能性が極めて低い」と結論付けています。
- 構造損傷の問題: 高温処理などで酵素を完全に除去するのは困難であり、土壌の構造そのものが損傷するリスクがあります。
結論:生命に先立つプロセスの生存
現在のパリコレージュドフランスおよび国立自然博物館の研究員となったブーケ氏は、この研究から得た重要な教訓を述べています。
- 境界線の曖昧さ: 「最も身近で馴染み深い環境である陸上土壌においても、常に生命の存在や不在を示すプロセスを区別・認識できないことが明らかになっています」。
- 予備的生物学的起源: 足元の場所において、生命に先立つプロセスが生き残っているのを想像するのは特に興味深いテーマであると語っています。