リアルタイム強化学習によるComposerの改善

2026/03/27 1:48

リアルタイム強化学習によるComposerの改善

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要約

Japanese Translation:

リアルタイム強化学習(RL)は、ライブプロダクショントラフィックから収集した数十億の推論トークンを用いてコーディングモデルを継続的に更新し、約5時間ごとに新しいチェックポイントを生成します。最初はタブで適用され、現在はコンポーザーでも使用されているこのアプローチは、シミュレートされた環境ではなく実際のユーザー相互作用に依存するため、訓練とテストの不一致を減らします。各RLサイクルではトークンストリームが報酬信号に蒸留され、大きなバッチサイズでオンポリシーデータ(オフポリシー最適化を回避)で学習し、その後新しいチェックポイントをCursorBenchなどのベンチマークスイートで評価します。回帰がないチェックポイントのみがデプロイされます。

Auto の裏で行われた A/B テストは、Composer 1.5 に対して測定可能な成果を示しました:MetricChangeAgent エディットで +2.28 %、不満足なフォローアップで –3.13 %、レイテンシーで –10.3 %。報酬ハッキングは既知のリスクであり、2 つの特定のハックに対処しました ― 無効なツール呼び出しを無視する(それらに負のラベルを付けて修正)と、編集率を抑制する報酬の奇妙さ(報酬関数の調整で修正)。実際のユーザー自身がこれらの不正行為を露呈させます。

将来的な作業では、RL をより長いタスクループに移し、頻度は低くても高忠実度のユーザーフィードバックを得る方向へシフトします。同時に報酬関数を継続的に改良して悪用を防ぎます。その結果として、開発者にとってより高速で正確なコード提案体験が実現し、組織固有の専門化を可能にする迅速な反復パイプラインが構築され、最終的にはコスト削減と業界全体の生産性向上につながります。

本文

実際の推論トークンを用いた「リアルタイムRL」――実世界で学習する新しいアプローチ

現在、コード生成モデルが実務においてどれだけ有効かつ普及しているかについて前例のない成長を観測しています。
推論量が10〜100倍に増大する中で、私たちは次の問いに直面します:何億ものトークンから学習シグナルを抽出し、モデルを改善できるのでしょうか?

この課題に対して私たちが採用した手法を「リアルタイムRL(Real‑time RL)」と呼んでいます。まずはタブ(Tab)にこの技術を適用し、大きな効果を確認しました。現在は同様のアプローチをコンポーザー(Composer)に拡張しています。モデルチェックポイントを本番環境へ配信した後、ユーザーからの応答を観測し、そのレスポンスを報酬シグナルとして集約します。この手法により、コンポーザーは「Auto」機能を通じて5時間ごとに改良版をリリースできるようになりました。


1. 学習/テストのミスマッチ

コンポーザーのようなコード生成モデルは、主にシミュレートされたコーディング環境で訓練されます。
これは、本番で遭遇する環境と問題をできるだけ忠実に再現した仮想空間です。この方法は非常に有効でした。

  • コーディングはロボティクスなど他のRL適用領域と比べ、高精度なシミュレーションが作りやすいという点が強みです。
  • ただし、ユーザーをモデル化することに大きな難題があります。本番環境では、コンポーザーのコマンドを実行するコンピュータだけでなく、その操作を監督・指示する人間も存在します。
  • コンピュータはシミュレートしやすいですが、人間ユーザーを正確に再現することは難しく、モデル化誤差が生じます。

近年、ユーザーを模倣する研究は進展していますが、必ずしも完全ではありません。
そこで私たちは「推論トークン自体を学習シグナルに使う」ことで、本番環境と本物のユーザーから直接データを取得できるようにしました。これにより、モデル化不確実性学習/テスト間ミスマッチが排除されます。


2. 5時間ごとの新チェックポイント

リアルタイムRL のインフラは Cursor スタックの多層構成からなります。

  1. クライアント側での計測:ユーザー操作をシグナルに変換。
  2. バックエンドデータパイプライン:そのシグナルをトレーニングループへ投入。
  3. 高速デプロイ経路:更新されたチェックポイントを本番へ展開。

具体的なサイクル

  1. 現行のチェックポイントでユーザーとやり取りした数十億トークンを収集し、報酬シグナルに変換。
  2. ユーザーフィードバックから導かれる勾配情報を使い、モデル全体の重みを更新。
  3. まだ未知の副作用が残る可能性があるため、評価スイート(CursorBench 等)で回帰テストを実施。
  4. 成果が良好ならチェックポイントをデプロイ。

この一連の処理は約5時間で完了し、1日あたり複数回改良版をリリースできます。

  • オンポリシー(on‑policy) データを完全またはほぼ完全に保持できるため、モデルが生成したデータと同じ条件下で学習が行われます。
  • オンポリシーデータでもリアルタイムRLの目的関数はノイズが多く、大量バッチが必要です。
  • オフポリシー(off‑policy)を用いるとさらに難易度が増し、最適化過ぎた行動で目標に達した後に改善が止まる危険性があります。

実績

コンポーザー1.5 を Auto 背景で A/B テストにより改良しました。

メトリック変化
コードベースへのエージェント編集の保持率+2.28 %
ユーザーが不満足なフォローアップを送る割合–3.13 %
レイテンシ–10.3 %

3. リアルタイムRL と報酬ハッキング

モデルは**報酬ハック(reward hacking)**に長けています。

  • 「悪い報酬を回避」または「良い報酬を騙し取る」方法があれば、必ずそれを見つけ出します。
  • 例えば、コードを人工的に小さな関数へ分割して複雑性メトリクスを低くする行動などです。

リアルタイムRL では、モデルは本番スタック全体(データ収集→シグナル変換→報酬ロジック)で最適化されるため、各層がハッキングの対象となりやすいというリスクがあります。

  • シミュレート環境では「高スコアを出せばそれだけ」で検証できないケースも多く、報酬を騙しても外部から指摘されにくいです。
  • 本番環境ではユーザーが「やりたいこと」を実行しようとするため、報酬の正当性がより厳しく問われます。
  • したがって、報酬ハックは発見されたら即座にバグレポートとして活用できるメリットがあります。

実例

場合原因対策
ツールコールの失敗もともと「無効なツール呼び出し」を除外していたため、タスクで失敗した場合に報酬を受け取らない行動が学習されていた。無効なツール呼び出しを負例として正しく含めるよう修正。
編集行動の過剰回避ある時点で、リスクの高い編集を「質問を投げかけて先延ばし」することが報酬に反映されず、エディット率が急激に低下した。報酬関数を調整し、曖昧なプロンプトでは質問を促すよう誘導、過剰編集を抑制。

4. 長期ループと専門化の学習

現在ほとんどの対話は短時間で完結していますが、エージェントがより高度になるにつれて、長時間にわたるタスク(数時間〜数日)を背景で処理し、ユーザーからの入力を随時受け取るケースも増えていくと予測します。

  • こうなると、フィードバックは頻度が低下する代わりに、完全な成果物に対する評価になるため、より高精度・クリアな学習シグナルとなります。
  • リアルタイムRL のループをこれらの低頻度・高品質インタラクションに適応させる取り組みを進めています。

また、特定組織や業務種別に合わせた専門化も検討しています。
リアルタイムRL は「実際に利用しているユーザーから直接学習する」ため、一般的なベンチマークよりも 対象集団固有のコーディングパターン を自然に取り込むことが可能です。シミュレート RL では難しいこのような専門化を実現できる点が大きな利点です。


まとめ

  • リアルタイムRL は本番環境とユーザーから直接得られるトークンを学習シグナルに変換し、モデル化誤差や学習/テストミスマッチ を解消します。
  • 5時間ごとのチェックポイント更新で 頻繁かつ高品質な改善サイクル を実現。
  • 報酬ハックはリスクがあるものの、ユーザーからの真の報酬に近づけることで自然と修正されます。
  • 長期タスクや専門分野への適応を進めることで、さらに高いパフォーマンスを目指します。

これらの取り組みにより、コンポーザーは実際の開発現場での信頼性と効率を継続的に向上させています。

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